![全磁束法測定により検出された健全なロープと5%腐食ロープの磁化曲線例](images/img08.png)
ワイヤロープの健全性診断
強靭なワイヤロープも使用するにしたがって腐食や断線、張力低下が発生します。このような状態での使用は、人命にかかわる事故を招きかねません。ワイヤロープの劣化状況を定期的に調査し、適宜対処することが安全面において非常に重要です。
東京製綱テクノスの「健全性診断」は、ワイヤロープの用途や使用環境に応じて腐食、断線、張力を独自のシステムで測定し、データを分析して劣化の度合いを正確に評価。安全上の問題点を抽出し、必要なメンテナンスを施します。
構造物・設備の機能と安全性維持のために「健全性診断」をぜひお役立てください。
- 1. 事前調査
- ワイヤロープ架設・取付後の補修・使用環境履歴や異常音・振動・外観などの各状況を必要に応じて綿密に調査
- 2. 測定
- それぞれの構造物・設備に応じたワイヤロープの「腐食」「断線」「張力」を高精度に測定
- 3. 測定結果分析
- 測定と事前調査の各結果を経験豊かな専門スタッフが分析し、ワイヤロープの健全性を総合的に評価
- 4. メンテナンス
- 健全性の評価に基づき構造物・設備の機能性・安全性維持に必要な補修・定期調査を実施
腐食測定(全磁束法による測定)
吊橋やステイ索などの静索において経年劣化の最大原因となるのが腐食です。東京製綱テクノスでは、従来の方法では不可能だった高精度の腐食測定を実現する全磁束測定システムを開発。細径から1,000mmクラスの太径まで、ロープの劣化状況のハイレベルな診断を可能にしました。定期的な腐食測定により、構造物・設備の安全性が一層確かなものとなります。
全磁束法による腐食測定の原理
全磁束法とは、ロープ内を通る磁束(全磁束)の測定値で腐食などによる欠損断面積を評価する方法です。下図のようにワイヤロープ内を軸方向に飽和磁化させたとき、ワイヤロープ内を通る磁束(φ)はワイヤロープの断面積(S)に比例します。健全な状態の断面積(S)に対して腐食部の断面積がS’の場合、減少した量(S-S’)が欠損した断面積であり、これは両者の磁束の差(φ-φ’)に比例します。腐食によって発生した赤錆は非磁性体のため、腐食部は断面積欠損とみなすことができます。したがって、全磁束法を用いることにより、ワイヤロープの腐食・摩耗による断面欠損を定量的に測定でき、ロープの健全性を評価できることになります。
![全磁束法による腐食測定の原理](images/img01.jpg)
腐食測定①(ソレノイド式全磁束法)【定点測定 連続測定】
全磁束法測定により検出された健全なロープと5%腐食ロープの磁化曲線例
![全磁束法測定により検出された健全なロープと5%腐食ロープの磁化曲線例](images/img08.png)
全磁束法測定システム構成
![全磁束法測定システム構成](images/img09.jpg)
太径ケーブルの測定例
![太径ケーブルの測定例](images/p24.jpg)
小規模吊橋主索の測定例
![小規模吊橋主索の測定例](images/p25.jpg)
腐食測定②(永久磁石式全磁束法)【連続測定】
連続測定用として新たに開発された方式で、斜張橋、橋梁用ハンガーロープやPC橋の外ケーブル等検査実績があります。構造物の長手方向に対する腐食状況を相対的な変化として検知します。
![腐食測定 永久磁石式全磁束法](images/p26.jpg)
![腐食測定 永久磁石式全磁束法](images/p27.jpg)
断線測定
ワイヤロープは使用に伴い断線が発生し、これを見逃すと切断事故になります。ワイヤロープの切断は大きな事故につながることが多く、事故を未然に防ぐには、ロープの取替時期の適切な判断が必要です。そのためには信頼性の高い断線測定を定期的に実施することをお奨めします。
ワイヤロープテスタによる断線測定の原理
検出器の中をワイヤロープが通過すると、検出器に内蔵した永久磁石によりワイヤロープが強く磁化されます。素線断線があると断面が減少するため、ワイヤロープ内部に流れていた磁束が外部に漏洩します。この漏洩磁束を検出コイルで検出し、信号として出力し記録します。
![ワイヤロープテスタによる測定例](images/img02.jpg)
検出器内部
![検出器内部](images/img05.jpg)
システム構成
![システム構成](images/img06.jpg)
断線部分の検出例
![断線部分の検出例](images/img07.jpg)
ワイヤロープテスタの使用方法は、動画マニュアルにてご覧いただけます。
ワイヤロープテスタ測定補助サービスを始めました。詳細はここから【PDF】
![ワイヤロープテスタ](images/p19.jpg)
![ワイヤロープテスタ](images/p20.jpg)
張力測定
ワイヤロープは吊構造物の引張材をはじめ、ステイ索やエレベータなど多数本で使用されることがあります。これらの用途において重要なのが張力管理です。当社では張力導入時の測定はもちろんのこと、安定性の維持に欠かせない張力の定期測定を高い精度で行っています。
振動法による張力測定
ロープに加速度センサーを取り付け、ロープを加振します。その時の共振振動数(一次)を加速度センサーおよびFFTアナライザーで測定し、次式により張力を計算します。
![振動法による張力測定](images/img03.jpg)
ワイヤロープの張力測定
![ワイヤロープの張力測定](images/p21.jpg)
![ワイヤロープの張力測定](images/p22.jpg)
![ワイヤロープの張力測定](images/p23.jpg)
3点ロール法による張力測定
ロープに3点ロール装置を取り付け、中央を押し込みます。押し込み力と押し込み量は比例しますが、その関係はロープ張力に依存します。この原理を用いて張力を算出します。
![3点ロール法による張力測定](images/img04.jpg)
ワイヤロープの損傷例
腐食による損傷の例
吊橋用ロープ
![吊橋用ロープ](images/p01.jpg)
塗装が剥がれて、内部より錆汁が出ている。
![吊橋用ロープ](images/p02.jpg)
海沿いに架設され、腐食が著しい。
索道用(ロープウェイ)
![索道用(ロープウェイ)](images/p03.jpg)
内・外部に腐食が進行し、素線が細って断線している。
![索道用(ロープウェイ)](images/p04.jpg)
内・外部に腐食が進行し、素線が細って断線している。
ジブクレーン補巻
![ジブクレーン補巻](images/p05.jpg)
外部の腐食は小さいが、内部の腐食は大きく断線が生じ始めている。
![ジブクレーン補巻](images/p06.jpg)
外部の腐食は小さいが、内部の腐食は大きく断線が生じ始めている。
断線による損傷の例
クレーン巻上用
![クレーン巻上用](images/p07.jpg)
内部に断線が多発し、切断寸前の状態。
![クレーン巻上用](images/p08.jpg)
断線により発生した切断事故後の状況。
索道用
![索道用](images/p09.jpg)
典型的な疲労断線の状況。
![索道用](images/p10.jpg)
ロープウェイ主索の断線。
ゲート開閉用
![ゲート開閉用](images/p11.jpg)
腐食による断線状況。
![ゲート開閉用](images/p12.jpg)
使用頻度が多く、外部に曲げ疲労断線が発生。
磨耗による損傷の例
斜坑巻上用
![斜坑巻上用](images/p13.jpg)
潰れ摩耗の状況。
![斜坑巻上用](images/p14.jpg)
潰れ摩耗による断線。
クレーン巻上用
![クレーン巻上用](images/p15.jpg)
擦りへり摩耗面の断線。
![クレーン巻上用](images/p16.jpg)
ロープ内部の圧こんと断線状況。
クレーン用
![クレーン用](images/p17.jpg)
擦りへり摩耗の状況。
エレベータ用
![エレベータ用](images/p18.jpg)
擦りへり摩耗と曲げ疲労による断線。